愛する人に贈りたいまる

まる 21世紀へ乾杯

次から次へ
オレンジ色の物体が地上から空へ飛んでいく

丘の下を覗くと建物のない野原が広がっていて
そこから大勢の人が飛ばしているようだ

オレンジ色が浮き上がるたびに歓声が沸き起こる

「すごい・・・」

次々と真っ暗な空の中に浮かんでいくオレンジ色の暖かな光に
息をすることさえ忘れてしまいそうだ

「あれは、なに?」
「天燈です。
昔、このあたりで盗賊が出没していたころ
民はとりあえず山に避難して、盗賊が去って安全になると
遠くへ逃げた村人に家に戻っても大丈夫だ、という合図を送っていたそうです。
その合図にこの天燈を使ったとか
今は治安も良くなり盗賊も現れなくなりましたが
幸福祈願の風習として天燈あげがここに残っているんですよ」

そう言って、私を見る
その眸が思いがけず優しくて、ドキリ、としてしまう

「きっとあなたはこういうのが好きなはずだ、と」

黒曜石の眸を、空に向ける

「飛ばす時間に間に合ってよかった」

だからあんなに急いだのね

文句言わなくて良かった
私に見せたい為だったんだものね

胸が熱くなる

「好きよ」

思わず、口から洩れる
びっくりした顔で私を見つめるチェ・ヨンに
私はあわてて両手を振る

「こういうのが好き、ってことよ。
勘違いしないでよね」

つい否定の言葉がでてしまう
・・・だって、言ってはいけないんだもの

チェ・ヨンは口角を上げた
「わかっておりますよ」
「でもよく私の好きなものがわかったわね」
「あなたほどわかりやすい人はいないですからね。
新しいもの、珍しいものには必ず食いつく」
まるで節操がないみたいな口ぶりね」
「そんなこと、思ってはおりません」

そう言って、唇が愉快そうにますます口角を上げる
声をあげて笑う姿はまだ見たことがないけれど
こうして楽しそうに話す姿を見るのは
すごく嬉しい

話している間にも天燈は次から次へと
漆黒の空に漂い
銀の月にむかって飛んでいく

私たちは言葉もなく
その光景を眺めていた

私の右手が、チェ・ヨンの腕に、触れた
無意識に掴む

チェ・ヨンが、私を見る
私も、その眸を見つめた

時が、止まる

何事もなかったかのように
チェ・ヨンの眸は、また、天燈を追いかけはじめた

私も、顔をあげて、天燈を見つめる

胸の鼓動が、やけにうるさい

そうして、しばらくして

また、空は銀の月だけになった

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