すぐに使えるまるテクニック7選



あらゆるまるが揃っています
「なんでそんな事聞くの?」
「え、いや」
「ほんとは違うこと聞きたいんじゃない?もしかして翔ちゃんのこと?」
グッと言葉に詰まった松潤を見て確信する。
「ねえ、なんで翔ちゃんとこ行かないの?好きなんだよね?」
「…それは」
「翔ちゃんも松潤のこと好きだって言ってたよ。ずっと待ってんでしょ。両思いじゃん。なのになんで?」
なんでなんでってしつこい俺に、とうとう諦めたように松潤が口を開く。
「…それが信じられねえんだよ」
「それって?」
「翔くんが、その、俺を、好き…だなんて」
「なんで?好きって言われてんでしょ?」
「口じゃなんとでも言える…」
まるでにのちゃんみたいなことを言う松潤。
それはそうだけど。その気持ちは俺だってわかるけど。でも。
「でもじゃあなんのためにそんなこと言うの?好きでもないのに好きって言って、翔ちゃんになんの得があんの」
「それはそう、だけど」
「だったら信用してあげればいいじゃん。翔ちゃん喜ぶよ」
松潤と翔ちゃんが上手くいけば、俺はにのちゃんにさよならされるかもしれない。そう思ってたのに、気づいたら一生懸命松潤をけしかけてた。
だって目の前の松潤は、いつもの松潤じゃなくて、弱々しくて自信がなくて妙に可愛かったから。大丈夫。頑張れって励まして。
「だけど翔くん、モテるのに。どれだけ理想が高くても選び放題なのになんでよりによって俺なんか」
ああ、そうか。松潤は自信が無いんだ。翔ちゃんに好かれてる自信。好かれる理由がわからなくて、だから俺にあんなこと聞いたんだ。
「松潤は可愛いよ?」
「どこが。俺はにのみたいに小さくもないし、可愛げだってない。こんなごつい奴のどこが可愛いんだよ」
どこがって、そういうとこなんだけどなあ。
全然自分をわかってなくて思わず苦笑する。
「そうやって好きな人のことで悩んでるとこ可愛いと思うよ?それに友達のこと大事にして、ずっと守ってあげて、幸せになって欲しいなんて願える優しいとこも翔ちゃんは好きなんだと思うよ。俺なんかよりずっと松潤を見てきた翔ちゃんなら松潤のいいとこいっぱい知ってるでしょ。そんなの好きになって当たり前だよ」
姿形じゃなくてさ。松潤が松潤だから好きなんだと思うけど。そう言った俺に、ずっと下を向いたままだった松潤が顔を上げる。
「俺が俺だから?」
「そう。松潤だって翔ちゃんが翔ちゃんだから好きなんじゃないの」
カッコよくてモテるから好きなんじゃないでしょ。そう言ったら小さくこくんと頷いた。
「俺もそうだよ。そりゃ小さくて可愛いにのちゃんは好みだけど、それだけでこんなに好きになったりしない。可愛いとか話してて楽しいとか、好きなとこはいっぱいあるけど、どこがって聞かれても答えらんないよ。だってにのちゃんがにのちゃんだから好きで、その全部が好きなんだもん」
好きなのに理由なんてないでしょ。
そう言ったら俺をじっと見ていた松潤が小さく笑った。
「かずも同じこと言ってた」
「え?」
「相葉くんが相葉くんだから好きなんだって」
「うそ…」
「嘘じゃないよ。これ以上は本人に直接確かめて」
とにかくありがとう、相葉くん。
そう言ってどこかスッキリしたような顔で笑って、それから凄く真剣な顔でまっすぐ俺を見つめて。
「かずのこと頼むね」
今まで何度か言われたのと同じ言葉。
だけど今回のは一番重く強く言われた気がして、それを受け取るのが俺でいいのかなってちょっと不安になった。
そんな俺の躊躇いに気づいたのか、松潤が大丈夫だよって笑ってくれたけど…。
「俺さ。あいつにはほんとに助けてもらったから幸せになって欲しいんだ」
聞いてる?ガキの頃の話。そう聞いてくる松潤に頷き返すとまた話し始める。
「かずは大したことじゃないって思ってるけど、ずっとそばにいてくれて、俺の代わりに喧嘩してくれて、俺はそのままでいいんだって肯定してくれて。それがどれだけ小学生の俺にとって安心できることだったか。だからかずにはすげえ恩を感じてる」
もちろんそれは残りの2人も同じだけど、一番表に立って闘ってくれたのがかずだったから。
ぽつぽつとまるでその時を思い出してるかのような、少し辛そうな顔で話し続ける松潤を俺は黙って聞いていた。